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内田けんじ監督『アフタースクール』 [映画:DVD]

大泉洋さん、堺雅人さん、佐々木蔵之助さん主演、内田けんじ監督による2008年に上映された作品です。

母校の中学校で働く人のよい教師・神野の元に、かつての同級生だと名乗る怪しい探偵・北沢が訪ねてくる。
北沢は神野の親友で同じく同級生、現在は一流企業に勤めるサラリーマン・木村の行方を追っていた。心ならずも神野は木村探しに巻き込まれてしまう……。
人を疑うことを知らない男と、人の裏側ばかりを見てきた男。
ちぐはぐコンビの捜査活動から、神野の知らなかった、友人・木村の一面が次々と明らかになり、物語は思いもよらぬ方向へと向かっていく……。

「甘くみてると、ダマされちゃいますよ。」
というキャッチフレーズ通り、見事に騙されました。
中盤で「あれ、もしかしてこれってこういう事なのかな?」と予想した事も見事に裏切られ、点在していた謎が収束していく流れはお見事で、思い込まされていた全ての物事に唖然とし、「そういう事だったのか!」という爽快感に包まれました。
いつもならあらすじを追いながら感想を書いていく所なのですが、この作品では何を書いても重大なネタバラシをしてしまうので出来ません。
一度観終えると必ずもう一度観たくなる作品です。全てが分かった上で観直すと全く違った印象の物語になり、それでいて全く違和感のない同じ映画として観る事が出来る稀有な作品です。複雑に練られたシナリオとその収束のさせ方、騙しの上手さに感嘆しました。

誠実で生まじめな木村とお人よしで人を疑う事を知らない神野、人の光を象徴するような2人に対して、探偵稼業の他にも後ろ暗い仕事と借金を重ね裏社会で生きている北沢。事態がハッピーエンドへ向かう中、1人闇に取り残されている北沢の姿が哀れです。そんな彼に、神野は言います。
「どこのクラスにもお前みたいな奴いるんだよ。全部わかった風な顔して捻くれて『学校なんてつまんねぇ』って言う奴。(中略)けどな、つまんなくしてるのはお前自身なんだよ。」
本当、その通りなんですよですね。
神野先生を演じる大泉さんの飄々としていながらも地に足を付けて悠然と立っている、そんな存在感が温かく魅力的でした。

先入観を持たず、「騙されないぞ」と身構えたりもせず、流されるままに観て頂きたい作品です。


アフタースクール [DVD]

アフタースクール [DVD]




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ガイ・リッチー監督『シャーロック・ホームズ』 [映画:DVD]

2010年に上映された作品です。

19世紀末のロンドン
若い女性が不気味な手口で殺される事件の犯人として、ホームズとワトソンは黒魔術を操る男、ブラックウッド卿を逮捕する。
彼は絞首刑となるが、死の直前、「私は復活する」と宣言。
その言葉通り、謎めいた事件が続発し……。

映画化されると聞いて初めてキャスティングを見た時には、「ちょっとイメージと違うなぁ……。」と思っていたのですが、観始めてみると全く気にならなくなりました。
事件が無い時には身の回りの事には全く無頓着で冴えない姿をしていたり、ワトソンの婚約者に嫉妬めいた感情を見せたりと、何とも情けない姿のホームズ。しかし、一たび事件が舞い込むと俄然輝き始めます。
知的好奇心の赴くままに事件を追うホームズと、そんなホームズに振り回され毒舌合戦を繰り広げつつも、絶妙のコンビネーションを見せるワトソンの姿に原作以上に強く深い絆を感じました。
ただ一つ引っかかったのは、ワトソンが婚約者のメアリーを紹介し、「初めまして。」と挨拶を交わした事です。メアリー・モースタン嬢はホームズが手掛けた「四つの署名」事件の依頼人では……?
ホームズとメアリーを初対面にする事で、ホームズとワトソンの結びつきをより一層深いものに見せるためなのかなと思いますが。
レストランでメアリーを紹介されたホームズは彼女を観察して自分の推理を聞かせ、メアリーは怒って席を立ってしまいます。ワトソンがホームズを窘めメアリーを追って行ってしまうこのシーンでは、ホームズの鋭い観察眼やそれに基づく自信過剰さ、ワトソン以外の人物と事件を介さずに関わる事を苦手としている様子などが伺え、名探偵の顔と同時に憎めない子どもっぽさを持つホームズに惹かれて行きました。

ワトソンが死を確認し埋葬されたにもかかわらず、墓から蘇ったブラックウッド卿。彼は魔術的な奇跡を起こして人心を支配し、イギリスを、そして世界を支配しようと目論見ます。冷たく暗い笑みを浮かべる彼もまた魅力的な悪役です。一方で魔術など信じていないホームズ。些細な痕跡からブラックウッド卿の手口を見抜き事件を追うのですが、どちらかというと推理要素よりもアクションが多めで、ホームズとワトソンの以心伝心ぶりや、CGで描かれた19世紀ロンドンの街並みを駆ける彼らの姿、ブラックウッド卿やその配下との戦い等など、知的で物静かな従来のホームズのイメージを覆す、行動的で肉体派なホームズの冒険を楽しめます。
肉体派なホームズですが知的な面ももちろんあり、張り巡らされた伏線と明かされていく謎に「そういう事だったのか!」と感嘆させられました。ホームズの知識の深さと緊迫した状況でも冷静さを失わない観察眼が光ります。ただ、ブラックウッド卿が死を免れた手口には「まぁ、そんなもんだろうな……。」とちょっとがっくりしましたが。魔術なんてこの世にはない、となるとああするしかなかったのでしょうが。

そしてホームズが心惹かれている女性、ホームズを振り回し小悪魔的な微笑を見せるアイリーンの存在も魅力的です。「ホームズを2度出し抜いた女性」だそうで、一見敵対関係にあるようなホームズとアイリーン、そしてアイリーンを操っている"謎の男"。ブラックウッド卿の事件と並行して進む彼らの関係は次回作への布石なのでしょうか。最後に出てくる"あの名前"に次回作への期待が高まります。

肉体派のホームズに「否」の声も多いようですが、こんなホームズもありだと思います。
霧に霞む19世紀ロンドンの美しい街並みとそこに潜む闇、その闇を暴くべく駆けるホームズとワトソンの冒険を存分に楽しめました。
固定概念を取っ払って観て頂きたい作品です。


シャーロック・ホームズ [DVD]

シャーロック・ホームズ [DVD]




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アンドリュー・ディビス監督 『穴/HOLES』 [映画:DVD]

2003年にアメリカで公開された作品。日本では劇場未公開です。

先祖のおじいちゃんがヘマをしたせいで、呪いをかけられ、不幸の家系になってしまったと信じる少年スタンリー
彼はある日、運悪く無実の罪で捕まってしまう。そして自分の潔白を証明することをあっさり諦め、少年矯正施設行きを受け入れる。しかし、そこは想像を絶する過酷なところだった。砂漠のど真ん中に建つその施設では、恐ろしい女所長が恐怖支配を行い、“人格形成のため”と称して、来る日も来る日も少年たちに大きな穴を掘らせていた。
だがその“穴掘り”には、ある別の大きな企みがあったのだった……。

おっとりした性格のスタンリー少年が放り込まれた矯正施設「グリーンレイク」は、緑の湖という名とは裏腹に荒涼とした砂漠の中に建っていて、あらゆる意味で荒れ果てた所です。
「一日中、灼熱の下で穴を掘ればいい子になる」という無茶苦茶な理念の下、深さ・直径1.5mもの穴を1人1つずつ、僅かな水と食料で掘らせています。威張り散らす所長の右腕・Mr.サー、彼ですら恐れる女所長・ルイーズ、そして一見少年達の理解者に見えるDr.ペンダンスキーも、ある少年への態度から非常に腹黒い人物だとわかります。
過酷な強制労働と、施設にいる非行少年達との関わりの中で、彼らに屈するでなく真っ向から対立するでもなく、流されているようででもしっかりと自分を保っているスタンリーの姿、そこから数々の確執を経て理解し合い友情を築く少年達の姿が魅力的です。

ある事件をきっかけに施設を脱走した友人・ゼロを追ってスタンリーも飛び出します。少年達の喝采を背に受けて、四方640kmに渡る砂漠での冒険がやがて全ての伏線を繋ぎあわせていきます。
「グリーンレイク」がかつて本当の緑に満ちた湖だった頃に起きたある悲恋、先祖が犯したミスによる呪いのいきさつ、犠牲者にキスの痕を残す事から「キッシン・バーロウ」と呼ばれ恐れられた女強盗の一味、そして現在のグリーンレイクで行われている過酷な穴掘り、スタンリーが心を通わせたゼロ、一見何の関連も無いような出来事がラストに全て収束していく様はご都合主義なんて見解を吹っ飛ばすほど爽快でした。

少年達の友情と冒険には童心に返って惹き付けられ、過去の悲恋に端を発した様々な事件には人種差別や罪と罰、復讐など考えさせられる事がたくさんあり、複雑に絡み合った過去と現在が1本の道に繋がる練られたストーリー構成には感嘆しました。

終盤でこの砂漠に降ってくる雨に、過去の罪と悲しみを洗い流し、現在の罪を許してくれるような温かさを感じます。

ラストもこの上ないハッピーエンドで締めくくられていて、不運が降りかかっても、諦めずに進めば運を切り開いて行けるのだと感じさせてくれました。
子どもから大人まで、幅広い世代で楽しめる作品です。日本では劇場公開されてないなんて勿体無いなと思います。お勧めです。


穴 / HOLES [DVD]

穴 / HOLES [DVD]

  • 出版社/メーカー: ブエナ・ビスタ・ホーム・エンターテイメント
  • メディア: DVD



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エリザベス・テーラー主演『緑園の天使』  [映画:DVD]

1945年に制作された作品です。原題は『NATIONAL VELVET』

1920年。イギリスの片田舎で肉屋を営んでいるブラウン家の娘ヴェルヴェットは何よりも馬が好きで、どうにかして自分が1匹飼えるような身分になりたいと願っていた。
ある日、彼女の家を頼ってマイという騎手くずれの少年がやって来た。彼の亡き父はヴェルヴェットの母がかつてドーバー海峡を泳ぎ渡った時のコーチなのであったが、彼はこのいきさつを知らず、今ではブラウンの金を盗んで逃亡しようとするひねくれ者であった。しかし一家の温かい空気は彼を引きとめ、やがて村の暴れ馬パイがくじ引きでヴェルヴェットのものになると彼は親身に彼女の乗馬教師になってやった。ヴェルヴェットはパイを訓練してグランド・ナショナルの障碍大レースに出場させようと懸命になっていたが、この無謀な企てに両親は許しを与えた。マイは彼女の金を預ってロンドンに行き、逐電をおそれるブラウンの危惧に反して出場許可を得て戻って来た上、いよいよ練習にはげんだ。

大人でも手懐けられない気性の荒い馬・パイをヴェルヴェットは難なく乗りこなしてしまいます。馬の事を語る時のきらきらした瞳と、暴れ馬を乗りこなす凛とした姿が魅力的でした。
そして純粋なヴェルヴェットの立ち振る舞いは、すれた放浪者となっていたマイの心を変えていきます。レースでの事故がトラウマとなって馬に乗れなくなってしまったマイは荒れた心を抱え放浪していました。しかし、ブラウン家に雇われてヴェルヴェット達と過ごす内に、彼の荒んだ目つきが少しずつ柔らかいものに変わっていきます。始めはブラウン家で未遂に終わったものの盗みを働きかけ、「馬なんて嫌いだ」と言い、瞳を輝かせるヴェルヴェットに対しても突き放すような態度を取っていたマイですが、パイの並外れた跳躍力に興奮し、グランド・ナショナルという途方も無い夢を抱くヴェルヴェットの力になる一心な姿、これが彼の本質なのだと感じました。
またドーバー海峡横断という偉業を成し遂げたヴェルヴェットの母の、2人を見守る温かい眼差しも印象的です。余計な手出しはせず、ここぞと言う時に自らの経験を踏まえて送られるヴェルヴェットへの言葉やプレゼント、子ども達を信頼している姿は理想の母親像でした。

そしてレースの直前、ヴェルヴェットはマイが見つけてきた騎手の態度が気に入らずクビにしてしまいます。今から探しても到底間に合いません。どうするのだろう、マイがトラウマを乗り越えて出場するのだろうかと思っていたら、ヴェルヴェットはマイに「髪を切ってほしい」と頼みます。万が一落馬すれば命を落としかねない危険なレースだとマイは反対します。そして当時の規約では女性が騎手になる事はできません。バレたら当然失格、観客の怒りに触れるかもしれない、そんなリスクを背負ってもヴェルヴェットはパイと共にレースに挑みます。「練習通りやれば大丈夫よ」とパイに語りかけるヴェルヴェットの表情、30~40頭の馬が出走するレースの緊迫感、落馬する者や障碍の前で立ち往生する馬が現れる度に血相を変えるマイ、先頭集団を走るパイの姿、片時も目を離せませんでした。

レースが終わり、一躍有名人になったヴェルヴェットとパイ。ブラウン家には映画出演のオファーが殺到し、父親は浮き足たってしまうのですが、ヴェルヴェットはパイの生涯を大切に思い全て断りました。
そしてマイは新たな人生を始めるため再び旅立ちます。悲しむヴェルヴェットに、「彼の人生を縛ってはいけない」と諭します。自分の母親とマイの父親との繋がりだけでも教えてあげたいと願ったヴェルヴェットは、母の言葉に背を押されマイを追いかけていきました。
ヴェルヴェットとマイの間には友情を超えた絆が芽生えたんだと感じます。

パイの颯爽と走る姿を見ていると、荷車を引いたりして人間に使役するためでなく、ただ走るためだけに生まれた馬っているんだろうなと思います。(レースも人間のため、と言えますが……。)
そして夢は叶うと信じ続ける事、その想いの強さが夢を叶えるんだと思わせてくれます。
イギリスの田舎の風景も美しく、素敵な作品でした。


主演のエリザベス・テーラーさんですが、3月23日に心不全で亡くなられたそうです。
ご冥福をお祈りいたします。


緑園の天使 [DVD]

緑園の天使 [DVD]

  • 出版社/メーカー: ワーナー・ホーム・ビデオ
  • メディア: DVD



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及川光博主演『クローンは故郷を目指す』 [映画:DVD]

2008年に制作された及川光博さんの主演作品です。


作業中に殉職した宇宙飛行士・高原耕平は、合法クローンとして蘇るが、記憶障害のために少年期の記憶のまま再生されてしまう。彼にはかつて子供の頃に、自分らの過ちのために事故死させてしまった双子の弟がいた。
耕平の妻・時枝は、心の傷を抱えたまま生前と変わらぬ容姿で宇宙から帰ってきた夫にとまどいを感じ、その現実を受け入れることに対して葛藤するが、やがてその存在を愛おしみ受け入れていくことになる。
そんな中、記憶の混乱が生じた耕平は病院を抜けだし、かつて家族で暮らした故郷を目指して歩み始める。そこで彼が見たものは……。


静謐で物悲しいストーリーでした。
子ども時代を過ごした故郷は自然豊な所で、幻想的な雰囲気が漂っています。やんちゃな耕平と対照的に大人しい弟の登、厳しくも優しい母との3人での暮らしはどこか懐かしく温かい気持ちになりました。
しかし登を死なせてしまった悲しい事故で、耕平は心に深い傷を負ってしまいます。母の「私より先に逝ってはいけない」という言葉を守るために、宇宙飛行士という危険な職に就いた耕平は自分が死んだ際にクローンになって生き続けるよう手配しました。この耕平の行為は、登を死なせてしまった、そして母から登を奪ってしまった、そんな罪の意識に苛まれていた現れなのではないかと感じました。でもきっと母はそういう事を言いたいんじゃなかったんだと思います。母の言葉に縛られてしまった耕平の姿が切ないです。
そして宇宙ステーションで事故に遭い死んでしまった耕平はクローンとして蘇るのですが、彼は子ども時代の記憶しか持っておらず、登を死なせたという罪の意識から錯乱してしまいます。そんなクローンの耕平の元へ、宇宙を漂っていた耕平の遺体が静かに落ちてきました。宇宙服の下の顔を見たクローンの耕平は、自分と同じ顔をした本物の耕平を登だと思い込み、遺体を背負って故郷を目指し歩き始めます。
耕平の遺体がクローン耕平の元へ落ちてきたのは、同じ遺伝子が引き合ったのでしょうか。記憶を辿り一心不乱に故郷を目指すクローン耕平の姿に、深く重い罪の意識と故郷への想いが込められていて胸を締め付けられます。
不完全体のクローンが研究所を脱走したと知った研究者達は2体目のクローンを作り出します。生前の記憶をほぼそのまま持って生まれた2体目のクローン耕平ですが、彼もまた1体目を追って故郷へ向かいます。舗装されいない田舎の道を倒れそうになっても黙々と歩き続けるクローンの耕平の姿に執念のようなものを感じました。故郷を目指す事が贖罪に繋がると無意識に考えていたのではないかと思います。切なく胸を打つシーンです。
そして苦難の末に辿り着いた故郷でクローン耕平が見たもの。1体目のクローン耕平の辿った運命、彼を追ってそれを目にした2体目のクローン耕平の想い。クローンは本物にはなり得ない、それでも生まれてしまったクローンの行き場のない想いに悲しく胸を締め付けられました。

罪の意識を抱えて生きてきた耕平、幼少時の記憶しか持たずおどおどした雰囲気の1体目のクローン、生前の耕平とほぼ同じ記憶を持ちながら自我も持ち、自分の意思で1体目を追って故郷を目指す2体目のクローン。
同一人物なのに全然違う人間、という難しい役所を見事に演じ分けた及川光博さんの演技に惹き付けられました。及川さんの演技力と美貌が、3人の耕平の数奇な運命をより切なく悲しく際立たせています。

静かに淡々と進む物語ですが、深いテーマと登場人物それぞれの思惑、美しい映像に飽きる事無く惹き込まれます。
心の傷、罪の意識、記憶とアイデンティティー、生と死、人の尊厳や魂の存在、現実にクローン人間が作られるようになったらどうなってしまうのか……、色々な事を考えさせられました。腰を据えてじっくり何度も観たい
作品です。







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ロマン・デュリス主演『ルパン』 [映画:DVD]

今更感たっぷりですが、明けましておめでとうございます。
昨年のご愛顧、ありがとうございました。本年もよろしくお願い致します。

2004年にアルセーヌ・ルパンの生誕100周年を記念して作成された作品です。

1884年、叔父スービーズ公爵の屋敷に暮らす少年アルセーヌ・ルパン。
ある日、彼は泥棒である父の指図で公爵夫人が所有するマリー・アントワネットの首飾りを盗み出し、父に手渡す。父は仲間とともに逃げ出すが翌朝死体となって発見され、アルセーヌと母は館を追い出されてしまう。
やがて、20歳となり父の盗みの才能を受け継いだアルセーヌは怪盗として活躍するが、謎めいたカリオストロ伯爵夫人を助けたことからフランス王家の隠された財宝を巡る争いに巻き込まれていく。
命懸けの死闘、華麗なる逃走劇、父との運命のドラマ、次々と現れる怪しい人物たち、そして従姉妹クラリスと稀代の悪女カリオストロ伯爵夫人との激しくも哀しい三角関係も絡み合って、謎は更に深まっていく……。

モーリス・ルブランのルパン作品原作、『怪盗紳士ルパン』(短編集)『カリオストロ伯爵夫人』『813』『奇岩城』などからエピソードが抜粋され構成されています。歴史的ロマンありラブロマンスあり、アクションも満載で、ルパンの少年時代から壮年に差し掛かるまでの冒険譚が描かれています。
ルパンを演じたのはフランスの若手俳優ロマン・デュリス。最初観た時には私のイメージとちょっと違っていたんですが、ワイルドでセクシー、それでいて優雅でスマートな立ち振る舞い、時折見せる悲しげな眼差しにどんどん惹きつけられていきました。貴婦人たちが集まるパーティでの、鮮やかでさり気ない盗みのテクニックはルパンファンなら必見です。
そして、ルパンの生涯の敵とも言えるカリオストロ伯爵夫人・ジョセフィーヌ。「100年生きている魔女」と言われる美しく謎めいた存在の彼女はルパンを惹きつけます。ジョセフィーヌを演じたクリスティン・スコット・トーマスの捉えどころの無い、冷たい微笑が魅力的でした。
共和制を打倒しオルレアン公爵を王座に就けようと企み、フランス王家の隠し財宝を狙うスービーズ男爵(クラリスの父)達。彼らの会合が行われる城館へ忍び込んだルパンは、そこで王家の財宝を狙って捕われ男爵達から死刑を告げられたジョセフィーヌを秘かに救出します。美しいジョセフィーヌと惹かれ合い、王家の隠し財宝にも興味を惹かれたルパンは、ルパンの子を宿しているクラリスから離れジョセフィーヌと行動を共にします。しかしこのジョセフィーヌ、目的を果たすためなら殺人も厭わない根っからの悪党。ルパンに囁く愛も本心なのかどうか計れません。男爵一味とのフランス王家の財宝争奪戦、ルパンとジョセフィーヌ、クラリスの関係、そして父・テオフラストの死の真相。多少詰め込みすぎの感はありますが、誰が本当の敵なのか? めまぐるしく変わる状況に惹きこまれ片時も目を離せませんでした。
衝撃的だったのはテオフラストの死に隠された真相です。ネタバレになるので詳細は書きませんが、冒頭の少年時代のルパンと父の会話が思わぬ伏線になっていて、父の死を知った幼いルパンの衝撃と、真相を知った青年ルパンのショックを思うと胸が痛みます。「顔の潰された死体」が発見されたら、その身元は疑ってかからなくてはいけないというミステリーの初歩を改めて実感しました。

結局、ジョセフィーヌと決別したルパンはクラリスの元へ戻ります。息子が生まれ、不安げなクラリスをよそに怪盗稼業を続けるルパン。しかし幸せな親子3人の暮らしは、ジョセフィーヌによって壊されてしまいます。息子のジャンは攫われ、クラリスは……。
青年になったルパンと再会し彼の怪盗稼業を知ったクラリスは、スービーズ公爵家の武術講師の職へ口添えし、怪盗稼業から足を洗う事を願いながら「あなたの生涯唯一の友」と一途にルパンを愛し支え続けた彼女のあまりに報われない人生が悲しいです。

それから時が経ち、ルパンはジョセフィーヌと共にいる息子・ジャンに偶然出会います。別れた当時とまるで変わらないジョセフィーヌは本当に魔女のようで(20年位は経過しているはず)ぞっとします。オーストリア皇帝の訪仏に沸く街で、ジョセフィーヌとジャンの企みを阻止しようとしたルパンですが……。
ラストは続編がありそうな雰囲気で終わってしまいます。ジャンとルパンの親子対決や、悪の華ジョセフィーヌとの決着がどうなるのか、気になって仕方ありません。

原作でもルパンは幸せを掴みかけては壊れてしまう人生を歩んでいます。怪盗を生業とする彼の因果なのかもしれません。
そんな悲運とそれに立ち向かっていくルパンの姿はとても魅力的です。
この作品は爽快な冒険活劇を期待すると肩透かしを食らうと思います。大人向けのシリアスで悲哀の漂うドラマにじっくりと浸って観て頂きたい作品です。


ルパン [DVD]

ルパン [DVD]




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アル・パチーノ主演『恋のためらい~フランキー&ジョニー』 映画DVD [映画:DVD]

'91年に公開されたアル・パチーノ主演の恋愛映画です。

刑務所から出所したばかりのジョニーはカフェレストランのコックの職を得るが、そこでウェイトレスのフランキーに一目惚れしてしまう。しかし、ジョニーの想いにフランキーの態度は固い。男性関係で辛い経験のある彼女は、臆病になっていたのだ……。

何と言ってもアル・パチーノ演じるジョニーが魅力的です! どんなにすげなくされても時に真摯に時にロマンチックに時にコミカルに、しつこいくらい一途に情熱的にフランキーを口説く姿に惹かれました。フランキーを見つめる視線が本当に愛情に溢れていて、「そんな目で見ないで」と戸惑うフランキーの気持ちが分かる気がします。また、ジョニーはフランキーに甘い口説き文句だけでなく、彼女にとっては耳が痛いであろう事も彼女のために告げていきます。ジョニーのこの恋に懸ける本気さを感じます。
ジョニーの一途さと、カフェの仲間達に打ち解け触れ合う姿に、フランキーも少しずつジョニーへ心を開いていきます。それでも完全には心を開けないフランキー。惹かれ合っているのはわかるのに、なかなか上手く行かない2人にやきもきしてしまいました。
フランキーとジョニーの2人が時折見せる暗く悲しい表情。過去に家族との悲しい別離を経験しているジョニーは、もう一度誰かを愛したい、愛し合いたいと願っています。対してフランキーは、過去に受けた傷からもう誰も愛さないと心に決めています。1人で生きると決めたフランキーは凛としていてとても美しいのですが、本当は孤独で淋しいのが自分で分かっているような、そしてジョニーを受け入れたいけれど、また傷付くのが怖い、そんな悲しげで不安げな表情に胸が痛みました。フランキーを演じるミシェル・ファイファーがまた美人で、凛とした立ち振る舞いや仲間に見せる柔らかい表情、過去の傷とジョニーへの揺れる気持ちに惹き込まれました。
ようやく自分の身体と心の傷の事をジョニーに打ち開けたフランキーと、彼女にかけたジョニーの言葉にじんわりと心が温まります。ラストシーンでラジオから流れるドビュッシーの『月の光』が美しく、またラジオDJの粋な計らいに思わず笑みがこぼれました。

ロマンチックな演出も各所にあり、中でも2人が初めてキスを交わす市場の花屋前のシーンはときめいてしまいます。またジョニーが器用さを活かし、じゃがいもでバラを作ってフランキーにプレゼントするシーンも印象的でした。個人的にこういうロマンチックな演出大好きです。
また、カフェの仲間達やフランキーの隣人達も温かい人達ばかりで、彼らとジョニー、フランキーの交流も心温まります。カフェのあるニューヨークの町並みも美しく、都会の片隅で寄り添って生きる人達の温かさを感じました。

決して若くない2人はどちらも過去に傷を抱え孤独と戦いながら生きている。恋は甘いだけでなく、どちらかといえば辛い事の方が多かったような2人の、不器用でためらう程に真剣な恋にじんわりと感動しました。


恋のためらい フランキー&ジョニー [DVD]

恋のためらい フランキー&ジョニー [DVD]

  • 出版社/メーカー: パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン
  • メディア: DVD



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深作欣二監督『魔界転生』 [映画:DVD]

山田風太郎さんの原作小説を、1981年に深作欣二監督が映画化した作品です。
何度かリメイクもされています。

寛永の時代のある夜、島原の乱で殉死したはずの天草四郎が再び命を取り戻す。
彼は自分と同じように不本意な死に追いやられた人々を集め、時の将軍家綱に復讐を開始するが、彼ら魔界衆の前に柳生十兵衛が敢然と立ちふさがった。

何と言っても天草四郎時貞を演じた沢田研二さんの妖しい退廃的な美しさがたまりません。
リメイクで天草四郎を演じた役者さんもいいんですが、天草ジュリーの美しさには及ばないのではないかと思います。

怨念でこの世に蘇った天草は無残な姿となった同胞に別れを告げ、徳川に復讐するために仲間を集めます。
最初に訪れたのは、壮絶な最期を遂げた細川忠興の正室・細川ガラシャ。攻め落とされ焼け落ちる屋敷に取り残され、家臣に自らを討たせる事で自害にかえた(ガラシャはキリシタンで、キリスト教で自殺は大罪として禁じられているため)彼女は、自分を置き去りにした忠興を恨んで天草と行動を共にします。
このガラシャを演じた佳那晃子さんもまた妖艶で惹き付けられます。天性の美貌と転生して得た魔界の力を発揮し、巫女に扮して時の将軍・徳川家綱(細川忠興と瓜二つ)に取り入り政治を乱すのですが、美しい裸身を惜しげもなくさらして家綱をたぶらかす様は官能を超えて芸術的ですらあります。
忠興の側室の存在に心を痛め、転生した後は「永遠の愛」を願いながらも、人の心を無くし魔性へ堕ちていく姿は、生前よりもさらに壮絶で悲しいものでした。

また天草は、死ぬ前に柳生但馬守と刃を交えたかったと嘆く年老いた宮本武蔵、煩悩を捨てきれない己が身を悔いた僧・宝蔵院胤舜、里を滅ぼされ復讐を願った伊賀忍者の青年・霧丸を転生させ仲間に引き入れます。
さらに、ガラシャ扮する巫女に不審を抱き、立ちはだかった宝蔵院胤舜を斬り伏せた柳生但馬守宗矩(十兵衛の父)をも、病に倒れたその隙に「息子と真剣勝負をしたかった」という無念を突いて転生させてしまいます。
人の心の迷いや隙を突き、転生を一度は拒んだ武蔵や宗矩を仲間に引き入れてしまう天草の巧みな話術と、妖しく光る金色の瞳は完全に魔の者のもので、同胞達の遺体を前に嘆き、徳川への復讐を誓った時の面影はほとんどありません。
天草の呪いにより穀物は実らなくなり、農民達は困窮してしまいます。常に天草の傍にいて呪詛の儀式を手伝っていた霧丸は、一揆で親を無くした娘と出会い惹かれ、更に自分達が行っている事が彼女のような悲しみを生む事に気付き悩み始めます。若く美しい霧丸を気に入っていた天草は、霧丸が人間の娘に惹かれている事に気付くと、「欲するのなら強引に奪えばいい」とそそのかし、文字通りの「口封じ」で苦悩する霧丸の口を封じてしまいます。この男性同士のキスシーン、2人とも死から蘇った魔の者という設定も相まって、何とも妖しい雰囲気に満ちた美しいシーンになっています。映画公開当時もかなり話題になったそうですね。結局、人の心を捨て切れなかった霧丸は転生を受け入れた事を悔いて、慕っていた柳生十兵衛に自分を殺してくれるよう頼みました。が、十兵衛は霧丸の願いを拒み運命と戦うよう告げます。十兵衛の厳しくも優しい一面が見えるシーンです。
一方、天草は困窮した農民達を扇動し江戸への攻撃を開始します。困窮の原因が天草にあるとは露ほども知らない農民達は、扇動に乗り怒りに駆られるまま江戸城を目指します。その途中、農民を率いる天草が目にしたのは、魔界の者となった身を悔い娘と駆け落ちしようとしていた霧丸の姿でした。「たわけが!」と吐き捨て霧丸を殺した天草ですが、ただ思い通りにならなかった部下を切り捨てただけでなく、お気に入りのものを失った天草の、最後の人間じみた感情が混じっていたように感じました。

一方の十兵衛は宮本武蔵が自分を狙っている事、霧丸を救えなかった事を知ると、天草達を討つべく妖刀村正を入手すべく、刀鍛冶の名匠・村正の下を訪れます。十兵衛の説得に応じ病を押して刀を打った村正。完成した刀を手にまずは宮本武蔵と一騎打ち。千葉真一さん(十兵衛)と緒方拳さん(武蔵)の殺陣は迫力満点で目が離せないシーンです。激闘の末に武蔵を討ち倒すと十兵衛は江戸城へ向かいます。
その頃江戸城は火の海になっていました。かつての夫・忠興の名を口にしたガラシャに激昂する家綱と、狂乱したガラシャ。火事に気付いて逃げようとする家綱を捕まえガラシャは炎が燃え盛る階下へと落ちて行きます。家綱と共に狂ったように笑い炎の中へ落ちて行ったガラシャは本望だったのでしょうか……?
そして江戸城へ辿り着いた十兵衛の前に現れたのは、魔に堕ちた父・宗矩。炎の中で刃を交える2人、宗矩は本懐を遂げられ満足だったでしょうが、十兵衛の胸に去来したものは何だったのでしょう。剣の道に生き自分の信じる道を行く十兵衛の振る舞いからはその胸の内を伺い知るのは難しいですが、「父を超える」という人生の大切な一幕がこんな形になってしまった事を強く嘆いただろうと思います。
このシーンの炎、CGではなく本当にセットに火を放って撮影が行われたそうで、炎の中での親子対決はクライマックスに相応しい鬼気迫る緊迫感に満ちています。
父を倒した十兵衛の前に現われた天草は十兵衛も魔界衆に誘いますが、十兵衛はこれを拒絶し天草に挑みます。背後の炎にも負けない熱演を見せる2人、やがて十兵衛の刀が天草の首を刎ねたのですが、天草は自らの首を抱えて高笑いし「人の世がある限り私は必ず戻って来る!」と言い残して消えていきました。
続編を思わせるラストシーンですが、現在にいたるまで続編の制作は無いようです。個人的には続編は作らない方がいいように思います。

荒唐無稽でオカルトめいた伝奇ロマンとバイオレンス、美しさを伴ったエロティシズムの中に、愛や憎しみ、欲、迷い、様々な人間の心模様が歴史上有名な登場人物を通してしっかりと描かれています。
そして天草の徳川への復讐心と憎悪は、いつしか人間全てへの憎悪に変わっていたように思います。
天草を始めとする魔界衆は単なる敵ではなく、人なら誰もがなり得る悪の道への可能性を示しているように見えました。
いつの時代にも、悪を生み出すのやはり人なのだと思います。


魔界転生 [DVD]

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ピーター・ボグダノヴィッチ監督『ペーパームーン』 [映画:DVD]

1973年に制作されたアメリカ映画です。

 1930年代の大恐慌期のアメリカ中西部。母を自動車事故で亡くして孤児となった少女・アディは、母と付き合っていた詐欺師のモーゼに連れられ、ミズーリにいる叔母の許まで旅することに。道中、ちゃっかり者のアディと、そんな彼女に助けられながら詐欺セールスを続けるモーゼ。いつしかふたりの間には、本物の親子のような愛情が芽生えていくが…。

何と言ってもアディを演じたティタム・オニールの存在感が光ります。
聡明でしたたかで大胆、それでいて9歳の女の子らしい可愛らしさに溢れていて惹き付けられました。
モーゼを演じたライアン・オニールとは実の親子という事もあり、初めてとは思えない自然な演技を見せてくれます。
あえてモノクロで撮られた映像や、練られたカメラワークも見所です。

アディの母親には3人の恋人がいて、アディの父親は誰なのかわかっていません。母の恋人の1人であるモーゼに「あごが似ている。自分の父親かもしれない」とアディは主張しますがモーゼはそれを断固として否定します。
そしてモーゼは孤児になったアディを利用し他人から200ドルをせしめたのですが、それを聞いていたアディは「それは私のお金だから返してくれ」と主張、しかしその時には車を買い替えたりしたためモーゼの手元にお金は残っていません。アディをミズーリへの汽車に乗せてとっとと別れようというモーゼの思惑をよそに、アディへ返す200ドルを稼ぐため2人は詐欺稼業をしながら車でミズーリへ向かう事になります。
モーゼの商売(?)は聖書の販売。新聞の死亡記事を探してその未亡人宅を訪問、「ご主人は生前にあなたに宛てて聖書を注文されていました」と頼んでもいない聖書を高く売りつける詐欺師。子どもを連れてちゃ仕事にならんと考えていたモーゼですが、詐欺がバレそうになったモーゼを機転をきかせて救ったり、相手が金持ちと見ればモーゼも驚くほどの金額をふっかけたりと才覚(?)を表していくアディ。頭の回転の早さとしたたかさ、子どもである事・孤児である事など自分の見せ方を心得ている様はモーゼ以上に詐欺の才能に長けています。
始めはケンカばかりの2人ですが、アディの度胸や聡明さを目の当たりにしたモーゼはアディを相棒として対等に接するようになり、アディはモーゼを「父親かもしれない」という思いを強めていき、2人の距離が少しずつ縮まっていく様にじんわりと心が温かくなります。
アディに助けられ荒稼ぎをするモーゼは、カーニバルで出逢ったグラマラスなダンサー・トリクシーに夢中になってしまいます。ボール紙で作られた月が微笑むセットでカーニバルの記念写真を1人で撮っているアディが切ないです。
その後、旅にトリクシーを同行させ、詐欺稼業も休止してこれまで稼いだお金をトリクシーに次々とつぎ込んでしまうモーゼに、嫉妬や不安を覚えたアディの不機嫌な表情が大人びていて魅力的です。そして旅をボイコットして草むらに座り込むアディと、「誰といても上手く行かないから、今だけは……」と悲しげに語るトリクシーとの会話、その後モーゼとトリクシーを引き離すためにトリクシーのメイド・イモジンと協力して打った作戦は前半最大の見せ場です。ここでもアディの頭の回転の早さと大胆な行動力が光ります。そしてモーゼとトリクシーの破局を前に、ちらりと見せる罪悪感に駆られた表情がまた可愛らしくて魅力的です。
トリクシーと別れ、詐欺稼業を再開する2人はあるホテルで酒の密売人を見つけます。まんまと密売人を騙し大金を手にした2人ですが、すぐに発覚し激怒した密売人の兄弟の保安官に追われ捕まってしまいます。ここでもアディの機転で大金を手にしたまま逃げおおせるのですが、保安官は執念深く追ってきます。決して派手なカーチェイスが繰り広げられるわけではないのですが、カメラ1台のみワンカットで撮影された一連の逃走劇はとてもスリリングで片時も目を離せません。
結局、他の詐欺を仕掛けている最中、町の中で保安官に見つかり、ぼこぼこに痛めつけられお金を全て奪われてしまったモーゼ。荒い息を吐きながらアディの名を呼ぶ姿にジーンとします。
目指すミズーリはすぐ近く。アディを叔母の家へ送り別れを告げたモーゼの寂しそうな表情に胸が痛みました。
アディは車を降りる直前、カーニバルで1人で撮った写真に「モーゼへ、アディより。」と短いメッセージを残します。写真を目にしたモーゼの表情に「一緒に撮ってやればよかった」と後悔が浮かんでいたように見えました。
そして、叔母の家で想像以上の歓迎を受けたアディ。もう、詐欺をする必要も無い、危険な目に遭う事もない。温かいミルクにシャワー、柔らかな布団も、憧れたピアノもある暮らしが始まる……はずでした。
寂しさを吹っ切るように出発したモーゼの車を追いかけるアディ。追ってくるアディに気付いて車を降りたモーゼの喜ぶ心とは裏腹な言葉と、切り返したアディのやり取りは序盤からの流れが見事に収束していて、その後2人の前に広がるどこまでも続く道と、広大な風景と共に迎えるエンディングにジーンとさせられました。

「たとえ紙で作った月でも、あなたが信じれば本物になる」
この作品の挿入歌「It's only papermoon」の歌詞の一節(の意訳)です。
終盤、「本当にパパじゃないの?」と聞いたアディに「そうだと言いたいが、違う」と答えるモーゼ。
モーゼとアディが本当に親子なのかどうかは不明なままですが、2人は親子以上に強い、本物の絆で結ばれたのだと思います。

じんわりと心温まる素敵な作品でした。





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クウェンティン・タランティーノ監督『キル・ビル』vol.1、vol.2 [映画:DVD]

タランティーノ監督による2本で1つの物語。2003年、2004年にそれぞれ公開された作品です。

世界最強の暗殺集団に属していた女殺し屋のザ・ブライド。妊娠を機に殺し屋稼業から足を洗った彼女は結婚式の最中、組織のボスであるビルとその配下である4人の殺し屋から襲撃を受ける。夫と式に参列していた友人達、宿っていた子どもも殺され、ブライド自身も凄惨な攻撃を受け、4年間の昏睡状態に陥る重傷を負わされる。昏睡から目覚めたブライドは、襲撃を指示したビルと4人の殺し屋への復讐に向けて動き始める。(vol.1)
東京のヤクザの頂点に立つオーレン石井と、組織を辞め家庭を持ち平穏な暮らしをしていたヴァニータ・グリーンの2人に復讐を果たしたブライド。残った2人、現在は組織を離れ酒場の用心棒として働いているビルの実弟・バドと、ビルの現在の愛人でありブライドとは犬猿の仲のエル・ドライヴァー、そして結婚式襲撃の首謀者と思われるビルに復讐するため、ブライドはまず手始めにバドが住んでいるテキサスの地へ向かう。壮絶な戦いの末バドとエルに復讐を果たし、ブライドはついにビルの下へ向かう―

vol.1は凄絶なバイオレンスアクションが中心です。
タランティーノ監督が好きだという日本の古い仁侠映画や時代劇へのオマージュが盛り込まれています。そのため、人間離れした殺陣や大量の流血シーンも多いのですが、単なる暴力描写だけでは終わりません。登場人物の持つ背景がきちんと描かれていて、今の生活を守りたいと願うヴァニータ、悲しくも壮絶な過去を持つオーレン、全てを失い復讐に燃えるブライド。交錯するそれぞれの真剣な想いが、凄惨な描写から目を逸らせなくしています。
ヴァニータの娘・ニッキーの目の前でヴァニータを殺したブライドが、ニッキーに向けた言葉が印象的でブライドの復讐にかける想いの真剣さが表れていると感じました。
そして、オーレン・石井の過去はアニメーションで描かれます。暗殺集団に属する事になるオーレンの幼少時代、日本人と中国アメリカ人の両親の間に生まれた彼女の、生きる事、地位や力を得る事への執着を植えつけた凄惨な過去が静かで流麗なアニメーションで描かれていて、彼女の存在感をより強烈でまた悲しいものにしています。
vol.2はバイオレンス描写もありつつ、けれど雰囲気は一転してビルとブライドの過去の恋愛ストーリーに重点が置かれています。
ビルは高い暗殺技術を持つブライドを認めそして彼女を女性としても愛するようになり、ブライドもビルの愛情を受け彼を愛し、回想シーンでの2人は暗殺者と言う特殊な世界に住んでいるものの、幸せそうな表情をしていました。けれど、ブライドがビルの子を身篭った時、ブライドは「この子は暗殺者の世界には住まわせたくない」と願いビルの下を離れます。ビルはそれを許さず、一方的に自分の下から離れたブライドを追い、過去を隠して別の男性と結婚しようとしていたブライドを襲撃させ、教会にいた夫や彼女の友人、神父達までも惨殺―それほどまでにブライドを愛していたのでしょう。こんな愛情は普通の女性では恐ろしくてとても受け止めきれないですね。ある意味、純粋な男なのでしょうが……。
復讐は虚しいものと言われますが、本懐を遂げたブライドの胸に去来したものは何だったのでしょう。自分を愛しそれ故に全てを奪った男、この世で最も愛しく憎い男。恐らく初めて、任務としてではなく自分の想いのままに戦い殺戮を繰り広げたブライドは、人生で一番充実していたのではないかとも思いました。

シリアスなシーンもありますが基本的にはツッコミ所満載で、(意図的な演出としての)間違った日本人や中国人をイメージした姿、物理法則を無視したアクション、数々の作品へのオマージュは元ネタがわかるともっと楽しめるのでしょう。
監督自身が「B級映画」と称するエンターテイメント性を楽しめる作品です。





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