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推理小説『扉は閉ざされたまま』 石持浅海 [小説]

2005年に刊行された石持浅海さんの作品です。文庫化は2008年。
(※若干のネタバレあり注意)

大学の同窓会で七人の旧友が館に集まった。“あそこなら完璧な密室をつくることができる……”伏見亮輔は客室で事故を装って後輩の新山を殺害、外部からは入室できないよう現場を閉ざした。自殺説も浮上し、犯行は成功したかにみえた。しかし、碓氷優佳だけは疑問を抱く。開かない扉を前に、息詰まる頭脳戦が始まった……。

この作品は犯人と犯行の手順が序盤で明らかにされている、いわゆる倒錯もののミステリーです。完全犯罪を目論んだ犯人・伏見はなぜ仲の良かった後輩を殺害しようと思い立ったのか、そしてなぜ「扉は閉ざされたまま」なのか。伏せられている犯人の動機と、かつて想いを寄せていた後輩の妹・碓氷優佳への複雑な感情と緊迫感溢れる頭脳戦に惹きこまれていきました。
久々の同窓会でテンションの上がる一同は、夕食の時間になっても部屋から出てこない新山を訝しみますが、伏見の巧みな誘導に乗せられ事態は伏見の思い通りに進むはずでした。しかし、後輩の妹でありただ1人同窓生ではない優佳だけは伏見の発言と現状に疑問を抱いていきます。扉には鍵がかかっており、どんなに呼んでも扉を激しく叩いても反応のない新山に、時間が経つにつれて「いくらなんでもおかしい、扉をこじ開けて様子を伺った方がいい」と主張する一同に対し、一見正論と思える主張を展開し扉を開ける事を阻止しようとする伏見、そんな彼に不審を抱く優佳。なぜ伏見は密室を維持しようとするのか。単に事故に見せかけたいなら頑なに密室を維持し続ける必要はないはずで、優佳の追及と次第に追い詰められていく伏見の心理に緊張感が高まります。
なぜ密室を維持し続けたのか。不明なままだった動機が明らかになると腑に落ちるのですが、その動機は伏見の歪んだ正義感によるもので、殺人を犯すほどの動機になり得るのか、というのは疑問です。この仕掛けありきの動機なのだろうと感じました。そう割り切って読めば面白い仕掛けだと思います。
そして、探偵役の碓氷優佳。同窓生ではないというのもあってか、ちょっと浮いた存在のように感じました。冷静で頭脳明晰、感情的になる事はほとんどなく、本人の「私は冷たい人間」という言葉通り、あまり人間味が感じられません。同じく冷静で頭脳明晰な伏見とのやり取りでは緊迫感のあるシーンになるのですが、他のメンバーといる時は彼女だけCGでアフレコされたシーンを観ているような違和感を抱きました。
かつては密かに想いを寄せていた2人ですが、優佳の本質を見てしまった伏見は距離を置いてしまいます。そんな伏見を追い詰めていく彼女は、謎を暴いてどうしたいのか。驚きの彼女の選択は、伏見と優佳の暗澹たる未来が示されているように感じました。続編にあたる作品が刊行されているそうなのでそちらも読んでみたいです。これは一種のメリーバッドエンドといえるような気がします。

文庫版には、伏見が殺人を決意した経緯が書かれた番外編が付属しています。それを読んでもいまいち共感は出来かねる動機だと感じました。とはいえ、曲がった事が嫌いで潔癖な伏見の人物像がより強調されているので、読んでみて損は無いと思います。

腑に落ちない点もありますが、一気に引きこまれる緊迫感に癖のある登場人物はやみつきになりそうです。


扉は閉ざされたまま (祥伝社文庫)

扉は閉ざされたまま (祥伝社文庫)

  • 作者: 石持 浅海
  • 出版社/メーカー: 祥伝社
  • 発売日: 2008/02/08
  • メディア: 文庫



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