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細見大輔さん出演『少年探偵団』観劇 [観劇]

今日は細見大輔さんが出演されている舞台、『少年探偵団』を観て来ました。
(若干ネタバレあり注意)

東京デパート洋服売り場で、人形に扮した宝石泥棒「人形怪盗」が現れた。
この事件が東京じゅうの評判になった三日後の夕方、
小林芳雄率いる「少年探偵団」の団員である、井上一郎とポケット小僧は、
町のはずれで顔の動かない怪しい男を目撃する。
早速尾行しはじめるが、男は突如行方をくらましてしまった。
辺りを見渡し、不自然なマンホールを見つけた二人は、
「少年探偵団」のBDバッジをその場に撒き、マンホールへと入っていくが…

危険を顧みず突き進んでゆく少年二人に待ち受けていたものとは?
そして、そのBDバッジを見つけた小林少年が取った行動とは?

果たして、「少年探偵団」は怪しい男を捕らえることが出来るのか?
(公式サイトより)

子どもの頃、少年探偵団シリーズを夢中になって読んでいました。大好きな作品に細見さんが出演されるという事で今日が待ち遠しくてたまらなかったです。
どちらかというと明智小五郎や小林少年よりも怪人二十面相に惹かれていた子ども時代なので、開演前にパンフレットを買って細見さんが怪人を演じるとわかると、推測はしていましたがやはりテンション上がります!
これまでにも色んな俳優さんが二十面相を演じてきましたが、この公演の細見さんの迫力といったらもう凄いです!
怪人が登場した瞬間から、小説で感じた乱歩世界独特のおどろおどろしい雰囲気が舞台上に溢れてきて、それまでの少年達による活き活きとした空気から一変、ひんやりと冷たく暗い、怪しい空気に変わります。少年を誘う優しくも妖しい声、罠にかける時の巧みな声色、高らかな笑い声、目的の為に手段を選ばない(殺しはしないけど)恐ろしさetcetc、目を背けたくなる怖さではなく、心奪われ思わず吸い寄せられてしまうような美しささえ伴う怖さと、圧倒的な存在感に目も耳も心もすっかり惹き付けられました。
悪の存在なので最後には小林少年に破れ退散してしまうのですが、去り際にも強烈な存在感を残し得体の知れない恐ろしい人物という印象が強められます。
反面、明智探偵が信頼を置く中村警部も細見さんが演じられています。原作のどこか抜けていてお茶目な警部さんっぷりもまた魅力的でした。
中村警部と怪人、真逆な役どころですがどちらも細見さんの魅力がたっぷりで、またこの難しい役どころの繊細な表現はもう素晴らしいの一言に尽きます。
そんなわけで、細見さんに惚れ直した一日でした♪

主役の少年達ももちろん魅力的です。
小林少年は責任感が強く大人びた優等生ですが、それが全く嫌味に見えず、時に子どもらしい表情も見えて、小説の中の小林少年そのまんまの可愛らしい存在でした。彼を慕う少年達もみんな個性的で、怪人に立ち向かう勇気に励まされ、また仲間を想う強い絆を羨ましく思いました。
「自分達はまだ子どもで、出来ない事がたくさんあるのはちゃんとわかっている。」
「でも、出来る事には真っ直ぐに突き進む。」
「諦める事に慣れたくないんです。」
小林少年のこの(一字一句正確ではありませんがこんなニュアンス・汗)台詞に心打たれました。
迷いも曇りも無いその瞳に映るものは、きっと全てが輝いているのでしょう。

乱歩世界の幻想的な雰囲気を味わい、童心に返って楽しめる素敵な舞台でした!
10月16日まで、青山円形劇場で上演されています。
是非たくさんの方に観ていただきたいです!
タグ:少年探偵団
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小説『夢幻界 オンディーヌ』 児島冬樹 [小説]

1987年に出版されたSFファンタジーです。

オンディーヌが眠りから覚めたとき、世界は今までとは明らかに違っていた。そしてオンディーヌは人間の姿ではなかった。一体、これは…?
何もかもオンディーヌを満足させてくれる世界であった。優しいラモンがいつも側にいて過ごす日々は幸せだった。
そんなある日、ラモンから意外な事を告白される。この世界は何のために創られたものなのか?
オンディーヌは本当の自分を求めて旅に出るのだが…。
ファンタジックなSFの世界と奇想天外な結未。

情景描写が巧みで美しい風景が脳裏に浮かんできます。
咲き乱れる花、澄んだ湖、その中を伝説上の生物が跋扈する様子はまるで絵画のようです。
オンディーヌ自身も上半身は美しい女性の姿で背中には白い翼、下半身は毛並みの綺麗な金色の馬、そして彼女を一途に守るラモンもまた雄々しい体格と美しい容姿を持つケンタウロス。ファンタジックな世界で、強く美しい2人の冒険に満ちた物語前半は読んでいて同じ冒険をしているようでわくわくさせられます。
「好きな所へ行って、好きな事をすればいい。」そう言われたオンディーヌは思うままに駆け、この世界を楽しみます。少々奔放すぎるのではないかと思うくらいに。好き勝手に振る舞っていざとなるとラモンを頼り、頼られたラモンは危険を顧みずオンディーヌを守り救おうとする、まるで子どものお守のようにも見えました。
そして、ラモンによってこの世界が作られた目的がオンディーヌ(と読者)に少しずつ明らかにされると、物語の流れが変わってきます。
最初に目覚めたオンディーヌが、真っ先に自分の容姿を気にした辺りから元の世界でのオンディーヌの性格が垣間見えていた気がしました。
この惑星はオンディーヌをを一方的に愛するラモンによって作られたもの。元の記憶は失われ、身体も改造され、美しい景色もスリルに満ちた冒険も、全て作り物。それを聞いてショックを受けラモンへの猜疑心を抱くオンディーヌですが、終盤で明らかになる真実はもっと深刻でした。
ラモンともう1人、飛竜の姿でオンディーヌ達を見守っていた男は元の世界でオンディーヌを巡って争っていました。飛竜となっている男がオンディーヌの心を得たのですが、オンディーヌの心はすぐさま別の男に向き始める……。常に自分を巡って男達を争わせようとするオンディーヌの悪女っぷりがラモンによって語られると、オンディーヌは猛反発します。オンディーヌの性質を改善するためと、彼女の心を自分に向かせたい、そんな一心でこの惑星を改造し、この世界を作り上げたと言うラモン。全てはラモンの言葉だけで、「一方的に信じろと言われても無理だ。」と彼女は主張するのですが、前半の冒険での彼女の奔放で自分本位な行動と発言を見ているので、ラモンの話は真実なのだろうと思えました。そしてラモンのオンディーヌを求め信じてほしいという想いが胸に刺さってきます。オンディーヌの性質は変わらないだろうと思えるのですが、そんな彼女が変わる可能性と自分に振り向かせたいというありったけの想いを込めてこの惑星を作り上げ、目覚めたオンディーヌの傍で守り続けたラモンの愚かなまでの一途な愛情が悲しいです。
ラモンの言葉に反発するオンディーヌは自分の記憶と元の身体を取り戻そうと旅に出ます。
元の身体が保存されている施設で、ラモンへの嫌悪感をはっきりと顕わにするオンディーヌ、そしてラモンが取った行動は悲しい結末を迎えてしまいました。残されたオンディーヌがもらした言葉がまた彼女の冷酷さを浮かび上がらせています。

誰かを愛する事は、時に人をとても残酷にさせる側面もあるのかもしれないと感じます。




夢幻界―オンディーヌ (角川文庫)

夢幻界―オンディーヌ (角川文庫)




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演劇集団キャラメルボックス2011サマーツアー『降り注ぐ百万粒の雨さえも』2回目観劇 [観劇]

昨日、演劇集団キャラメルボックスの公演、『降り注ぐ百万粒の雨さえも』お昼の回を観てきました♪
(ネタバレあり注意)

<あらすじ>
慶応4年1月、鳥羽伏見の戦いに敗れた新選組は、船で江戸へ向かう。副長・土方歳三は江戸での再起を叫ぶが、隊士は半減。池田屋騒動の頃の勢いはもはやどこにもなかった。一番隊士・立川迅助は、土方の命令で、沖田総司の世話係となる。沖田は労咳が悪化し、一人で歩くこともできなくなっていた。隊から離脱し、千駄ヶ谷池尻橋近くの植木屋の離れで静養することに。しかし、土方たちが甲陽鎮撫隊として、甲府に行くと聞き、無理やり後を追いかける。迅助が止めるのも聞かずに……。
(公式サイトより)

初日を観て展開がわかっていても泣けますね……。
わかっているからこそ泣けてくる所もあり。
(以下ネタバレ多数につき追記へ)

新撰組ファンはもちろん、そうでない人にも、幕末史をよく知らなくても、充分に楽しめるお勧めの舞台です!


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演劇集団キャラメルボックス2011サマーツアー『降り注ぐ百万粒の雨さえも』観劇 [観劇]

演劇集団キャラメルボックスのサマーツアー『降り注ぐ百万粒の雨さえも』、初日6日のお昼の回を観て来ました♪

慶応4年1月、鳥羽伏見の戦いに敗れた新選組は、船で江戸へ向かう。
副長・土方歳三は江戸での再起を叫ぶが、隊士は半減。池田屋騒動の頃の勢いはもはやどこにもなかった。
一番隊士・立川迅助は、土方の命令で、沖田総司の世話係となる。沖田は労咳が悪化し、一人で歩くこともできなくなっていた。隊から離脱し、千駄ヶ谷池尻橋近くの植木屋の離れで静養することに。
しかし、土方たちが甲陽鎮撫隊として、甲府に行くと聞き、無理やり後を追いかける。迅助が止めるのも聞かずに……。

まだ始まったばかりなので詳細な感想は後日改めるとしまして。
大好きなキャラメルボックスが大好きな新撰組の舞台をやる、至福です。
2009年に上演された『風を継ぐ者』の続編という形になっています。
この時代の新撰組はかつての勢いを無くし、転落の一途を辿っているわけで。
でも、誰も絶望なんかしていない。どんなに苦しい状況でも自分の信念を貫いて走り続ける、そんな熱い皆の姿に惹き付けられました。
殺陣もかっこよくてしびれますし笑い所も満載、あの人の生き様に涙し、あの人の行動に愕然とし、あの人にたくさん笑わせてもらい、たくさんの元気をもらえたあっという間の2時間でした!
……まさかあの人に泣かされるとは……!

新撰組にとって敵だけど悪ではない人達もまた、熱い想いと共にあの時代を駆けていて、彼らの生き様にも胸を打たれます。
彼らが戦う理由とその姿、最高にかっこよかったです。

前作を知らなくても歴史に疎くても絶対に楽しめる作品です。
是非、たくさんの人に観て頂きたいと思います。

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演劇集団キャラメルボックスアナザーフェイス『ナツヤスミ語辞典』 [観劇]

演劇集団キャラメルボックスの公演『ナツヤスミ語辞典』4日お昼の回を観てきました。
(若干ネタバレあり注意)


クサナギの元に一通の手紙が届いた。
それは、三年前に担任した生徒から。
そこに書いてあったのは、ちょっと不思議な夏休みの出来事だった。
カブト・アゲハ・ヤンマの3人は中学二年生。
ヤンマがプールの水を抜いてしまった事がバレて、先生からプール掃除を命じられる。
そこへ、白い服を着た男・ウラシマが表れてカブトが母から借りたカメラでみんなの写真を撮り始める。
翌日現像してみると、そこに映っていたのは、なんと15年前の景色だった……。
(公式サイトより)

あらすじから何となくイメージしたのとは全く印象の異なる物語が展開され、愛や真実、想い出、成長など色んなものが詰まった素敵な舞台でした!
ある誤解を解くためにやって来たウラシマと名乗る男。彼はカブトの母・ムロマチに会いに行こうとします。しかしウラシマと行動を共にするナナコは「止めておいた方がいい。どうせ話なんて聞いてもらえない。」という……。
彼ら3人の関係と事情が明らかになると、そこにあるそれぞれの想いが切なくてたまりません。
このウラシマを演じた鍛治本大樹さんがめちゃくちゃカッコイイのです!人が良さそうで一途な好青年で、でも女心には鈍感で……。彼の気持ちや彼を取り巻く人達の想いが切なくて涙が出ました。
またムロマチを演じたコロさんも素敵です。カブトを1人で育てる強い凛々しさ、その奥に隠された悲しみと愛情に胸を打たれました。彼女がずっと身につけていた物に、彼女の想い全てが込められているんだと感じました。

あらすじからすれば主人公はカブト達3人のようですが、私が惹きつけられたのはウラシマ達でした。
「ナツヤスミ」は私にとってもう遠い昔の懐かしいものでしかなくなってしまい、中学生の視点に帰ってこの物語を観る事は出来ず、その事にちょっと淋しさを覚えました。

パワフルで眩しくて、切なさもあり素敵な時間を過ごせました。
この公演はキャラメルボックス柿喰う客という劇団のコラボレーションです。
キャラメルボックスとは少し違った、でも優しくて熱いキャラメルらしさもあり、安心して観ていられました。
8月11日まで、新国立劇場で上演されます。
是非たくさんの方に観て頂きたい作品です。

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内田けんじ監督『アフタースクール』 [映画:DVD]

大泉洋さん、堺雅人さん、佐々木蔵之助さん主演、内田けんじ監督による2008年に上映された作品です。

母校の中学校で働く人のよい教師・神野の元に、かつての同級生だと名乗る怪しい探偵・北沢が訪ねてくる。
北沢は神野の親友で同じく同級生、現在は一流企業に勤めるサラリーマン・木村の行方を追っていた。心ならずも神野は木村探しに巻き込まれてしまう……。
人を疑うことを知らない男と、人の裏側ばかりを見てきた男。
ちぐはぐコンビの捜査活動から、神野の知らなかった、友人・木村の一面が次々と明らかになり、物語は思いもよらぬ方向へと向かっていく……。

「甘くみてると、ダマされちゃいますよ。」
というキャッチフレーズ通り、見事に騙されました。
中盤で「あれ、もしかしてこれってこういう事なのかな?」と予想した事も見事に裏切られ、点在していた謎が収束していく流れはお見事で、思い込まされていた全ての物事に唖然とし、「そういう事だったのか!」という爽快感に包まれました。
いつもならあらすじを追いながら感想を書いていく所なのですが、この作品では何を書いても重大なネタバラシをしてしまうので出来ません。
一度観終えると必ずもう一度観たくなる作品です。全てが分かった上で観直すと全く違った印象の物語になり、それでいて全く違和感のない同じ映画として観る事が出来る稀有な作品です。複雑に練られたシナリオとその収束のさせ方、騙しの上手さに感嘆しました。

誠実で生まじめな木村とお人よしで人を疑う事を知らない神野、人の光を象徴するような2人に対して、探偵稼業の他にも後ろ暗い仕事と借金を重ね裏社会で生きている北沢。事態がハッピーエンドへ向かう中、1人闇に取り残されている北沢の姿が哀れです。そんな彼に、神野は言います。
「どこのクラスにもお前みたいな奴いるんだよ。全部わかった風な顔して捻くれて『学校なんてつまんねぇ』って言う奴。(中略)けどな、つまんなくしてるのはお前自身なんだよ。」
本当、その通りなんですよですね。
神野先生を演じる大泉さんの飄々としていながらも地に足を付けて悠然と立っている、そんな存在感が温かく魅力的でした。

先入観を持たず、「騙されないぞ」と身構えたりもせず、流されるままに観て頂きたい作品です。


アフタースクール [DVD]

アフタースクール [DVD]




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小説『人質カノン』 宮部みゆき [小説]

'01年に出版された宮部みゆきさんの短編集です。

「動くな」。終電帰りに寄ったコンビニで遭遇したピストル強盗は、尻ポケットから赤ちゃんの玩具、ガラガラを落として去った。事件の背後に都会人の孤独な人間模様を浮かび上がらせた表題作、タクシーの女性ドライバーが遠大な殺人計画を語る「十年計画」など、街の片隅、日常に潜むよりすぐりのミステリー七篇を収録。

七つの短編どれもがとても深く読み応えがありました。
生きる気力を失った人々、単調な日々を漫然と過ごす人々、そんな人達に生きる活力を与えてくれます。
中でもお気に入りなのが『八月の雪』です。
いじめを苦に自殺したクラスメイト、そしていじめグループの連中は何の罪にも問われずのうのうと生きている。その事に憤りや後悔を感じていた充は、ある日いじめグループの暴言に反論、逆ギレした彼らから逃げトラックにはねられてしまいます。片足と同時に生きる気力も失い、学校に通うのを止め引きこもりになった充の「こんな理不尽で不公平な世の中で、立ち直って生きていく価値があるのか教えてほしい。」といった旨の言葉に心が痛みました。もしも同じ事を問い掛けられたら、きっと言葉に詰まってしまうでしょう。
そうして殻に篭もってしまった充は、亡くなったばかりの祖父の文箱から遺書のような手紙の存在を知ります。死を覚悟した祖父が、その後の人生をどう生きてきたのか。両親に尋ねても「戦時中のものじゃないか?」というくらいしかわからず、興味を覚えた充は年賀状を頼りに祖父の友人の連絡先を探します。家族以外とは話す事も無かった充が、見ず知らずの人に電話をかけ知りたい事を手繰り寄せていく姿は、捨て鉢で抜け殻のようだった彼が確実に変わっていく様を見せてくれます。
ようやく辿り着いた祖父の過去は、まだ中学生の充には理解の難しい出来事でした。それでも、当時の祖父をよく知る柴田老人から聴いた話は充の心を動かします。一通り当時の事を語り「懐かしいなぁ」と言った柴田老人。そして若干二十歳で、それまでの価値観がひっくり返されるような事を、死を覚悟せざるを得ない辛く恐ろしい状況を経験し、それでもその後の60数年を生きてきた祖父は何を思っていたのか。祖父が元気な時でもあまり言葉を交わさなかった充は、その後ずっと考えを巡らせます。そして祖父が体験した事を知りたい、知らなくちゃいけないと決意し、それが死を覚悟するまで追い詰められても、立ち上がって生きていく事の意味を見出す事に繋がると感じます。理不尽な目に遭いずっと捨て鉢でふてくされていた充が、わずかでも生きていく希望を見つけようとする姿に胸を打たれました。

どの作品も、失望し生きる事に疲れている人達を無責任に応援するのではなく、自発的に生きる活力を得る手助けをしてくれるような、宮部さんの温かく力強いエールを感じました。
お勧めの作品です。


人質カノン (文春文庫)

人質カノン (文春文庫)




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演劇集団キャラメルボックス緊急公演Vol.2『銀河旋律』 [観劇]

演劇集団キャラメルボックスの緊急公演『銀河旋律』のGREENキャストバージョンを観て来ました。
(※若干ネタバレあり注意。)

タイムマシンが実用化された時代。
「ニュースプラネット」では、今日もタイムトラベラーが引き起こした事件について伝えていた。その最中、ニュースキャスター・柿本光介は軽いめまいに襲われる。柿本の過去がまた改変されたのだ。
柿本と高校教師・はるかの過去が変えられたのは、これで二度目。それは、二人の仲を引き裂こうとする、はるかの元同僚・サルマルの仕業だった。サルマルの企みを阻止しようとする柿本。しかし、翌日、またしても過去が変えられてしまう。柿本は、すぐにはるかに電話をする。しかし、はるかは1年前にサルマルと結婚していた。
はるかを取り戻すため、柿本は地位も名誉も捨てて、過去へとさかのぼることにする。
(公式サイトより)

どの登場人物の気持ちもとても切なくて、胸を打つストーリーでした。
サルマルの手によって改竄された現在で、柿本はすぐにサルマルと結婚生活を送るはるかへ電話をかけます。はるかはサルマルと過ごした日々の記憶と同時に、柿本との日々の事もまだ覚えていました。でも「それはもう無くしてしまったもの」と語るはるか。舞台上では触れ合える位置にいるのに、電話で話しているという状況に加えて心もすれ違い、絡み合わない2人の視線が切ないです。
そして改竄された現在では、柿本の同僚・桜田よしのが彼を愛しています。柿本も、それは改竄された過去の記憶だとわかっていつつも、よしのを愛する気持ちも確かに存在するのを感じます。それでもはるかを忘れたくないとタイムトラベルを決意する柿本。そんな彼に、たとえ改竄された過去だとしても今の自分には柿本が必要だと、今はこれが真実なのだと叫ぶよしのがまた切なくてたまりません。結局、職も家も全てを捨ててタイムトラベルに向かう柿本によしのが差し延べた救いの手。彼女は本当に強く美しい人だと感じました。
タイムマシンで一年前に向かった柿本は、はるかの学校で学生達がはるかとサルマルが結婚するという話をしているのを聞きます。「過去の人間と接触してはいけない」という決まりを破り、彼は必死にはるかに呼びかけます。改竄されたこの時代の流れでは出逢ってすらいない2人。「会うのは初めてだけど、ずっとずっと好きでした!」と叫ぶ柿本の姿に胸を打たれました。
また、一度きっぱりとふられたにも関わらず、ずっとはるかを想い続けるサルマル。過去を改竄してはるかと柿本を引き裂き、一時でも望みの生活を手に入れた彼は果たして幸せだったのでしょうか……。サルマル自身は「これは改竄した過去だ」と知っているはずなのに。そして柿本とよしのをくっつけようとしたのは何故なのか。ストーリーだけを見ていると、はるかと自分の仲を柿本に邪魔させないためなのだろうと思いますが、このGREENキャストでサルマルを演じた三浦剛さんを観ていると、柿本への罪悪感があるようにも見えました。サルマルは独りの淋しさを知っているから。そんな悪人になりきれない心の持ち主のように感じました。もちろん、柿本からすれば「そんな事よりはるかを返せ」って話なのですが。
他のチームのサルマルを観たらまた違う印象を受けるのでしょうね。
サルマルの視点からもこの物語を観てみたいと思います。

切ない想いでいっぱいのラブストーリーではありますが、キャラメルボックスらしい笑い所も満載です。
特にはるかの教え子である男子学生3人組の、ハイテンションで暑苦しいけど10代の少年らしい可愛らしいやり取りに、お腹が痛くなるほど笑わせてもらいました。

この公演はBLUE、RED、GREENの3チームに分かれてのトリプルキャストで行われています。
詳細はこちら
同じ脚本にも関わらずまるで違う雰囲気に仕上がっているとの事で、時間と金銭的余裕があれば全部のチームを観たい所なのですが……。
7/5まで3日間の限定公演、是非たくさんの人に観て頂きたい作品です。

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ガイ・リッチー監督『シャーロック・ホームズ』 [映画:DVD]

2010年に上映された作品です。

19世紀末のロンドン
若い女性が不気味な手口で殺される事件の犯人として、ホームズとワトソンは黒魔術を操る男、ブラックウッド卿を逮捕する。
彼は絞首刑となるが、死の直前、「私は復活する」と宣言。
その言葉通り、謎めいた事件が続発し……。

映画化されると聞いて初めてキャスティングを見た時には、「ちょっとイメージと違うなぁ……。」と思っていたのですが、観始めてみると全く気にならなくなりました。
事件が無い時には身の回りの事には全く無頓着で冴えない姿をしていたり、ワトソンの婚約者に嫉妬めいた感情を見せたりと、何とも情けない姿のホームズ。しかし、一たび事件が舞い込むと俄然輝き始めます。
知的好奇心の赴くままに事件を追うホームズと、そんなホームズに振り回され毒舌合戦を繰り広げつつも、絶妙のコンビネーションを見せるワトソンの姿に原作以上に強く深い絆を感じました。
ただ一つ引っかかったのは、ワトソンが婚約者のメアリーを紹介し、「初めまして。」と挨拶を交わした事です。メアリー・モースタン嬢はホームズが手掛けた「四つの署名」事件の依頼人では……?
ホームズとメアリーを初対面にする事で、ホームズとワトソンの結びつきをより一層深いものに見せるためなのかなと思いますが。
レストランでメアリーを紹介されたホームズは彼女を観察して自分の推理を聞かせ、メアリーは怒って席を立ってしまいます。ワトソンがホームズを窘めメアリーを追って行ってしまうこのシーンでは、ホームズの鋭い観察眼やそれに基づく自信過剰さ、ワトソン以外の人物と事件を介さずに関わる事を苦手としている様子などが伺え、名探偵の顔と同時に憎めない子どもっぽさを持つホームズに惹かれて行きました。

ワトソンが死を確認し埋葬されたにもかかわらず、墓から蘇ったブラックウッド卿。彼は魔術的な奇跡を起こして人心を支配し、イギリスを、そして世界を支配しようと目論見ます。冷たく暗い笑みを浮かべる彼もまた魅力的な悪役です。一方で魔術など信じていないホームズ。些細な痕跡からブラックウッド卿の手口を見抜き事件を追うのですが、どちらかというと推理要素よりもアクションが多めで、ホームズとワトソンの以心伝心ぶりや、CGで描かれた19世紀ロンドンの街並みを駆ける彼らの姿、ブラックウッド卿やその配下との戦い等など、知的で物静かな従来のホームズのイメージを覆す、行動的で肉体派なホームズの冒険を楽しめます。
肉体派なホームズですが知的な面ももちろんあり、張り巡らされた伏線と明かされていく謎に「そういう事だったのか!」と感嘆させられました。ホームズの知識の深さと緊迫した状況でも冷静さを失わない観察眼が光ります。ただ、ブラックウッド卿が死を免れた手口には「まぁ、そんなもんだろうな……。」とちょっとがっくりしましたが。魔術なんてこの世にはない、となるとああするしかなかったのでしょうが。

そしてホームズが心惹かれている女性、ホームズを振り回し小悪魔的な微笑を見せるアイリーンの存在も魅力的です。「ホームズを2度出し抜いた女性」だそうで、一見敵対関係にあるようなホームズとアイリーン、そしてアイリーンを操っている"謎の男"。ブラックウッド卿の事件と並行して進む彼らの関係は次回作への布石なのでしょうか。最後に出てくる"あの名前"に次回作への期待が高まります。

肉体派のホームズに「否」の声も多いようですが、こんなホームズもありだと思います。
霧に霞む19世紀ロンドンの美しい街並みとそこに潜む闇、その闇を暴くべく駆けるホームズとワトソンの冒険を存分に楽しめました。
固定概念を取っ払って観て頂きたい作品です。


シャーロック・ホームズ [DVD]

シャーロック・ホームズ [DVD]




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演劇集団キャラメルボックス2011ハーフタイムシアター『ヒア・カムズ・ザ・サン』『水平線の歩き方』 [観劇]

昨日、演劇集団キャラメルボックスのハーフタイムシアター『ヒア・カムズ・ザ・サン』と『水平線の歩き方』夜の回を観に行って来ました。
本日で千秋楽のためネタバレしてます。

『ヒア・カムズ・ザ・サン』
真也は30歳。出版社で編集の仕事をしている。
彼は幼い頃から、品物や場所に残された、人間の記憶が見えた。強い記憶は鮮やかに。何年経っても、鮮やかに。
ある日、真也は会社の同僚のカオルとともに成田空港へ行く。カオルの父が、アメリカから20年ぶりに帰国したのだ。父は、ハリウッドで映画の仕事をしていると言う。
しかし、真也の目には、全く違う景色が見えた……。

『水平線の歩き方』
幸一は35歳。社会人ラグビーの選手。
ある夜、自分のアパートに帰ると、部屋の中に女がいた。どこかで見た顔。彼女はアサミと名乗った。
それは、幸一が小学6年の時に病気で亡くなった、母だった。親子二人で過ごした日々が、幸一の脳裏に鮮やかに蘇る。
あの頃、母は大人に見えた。
が、今、目の前にいる母は、明らかに自分より年下だった……。
(公式サイトより)

『ヒア・カムズ・ザ・サン』
ビートルズの楽曲のタイトルで、意味は「陽はまた昇る」。
この時勢にぴったりですね。
公式サイトであらすじとキャスティングを見たときに「もしかしてカオルって……?」と思っていたら、やはり3年前に上演された作品『ハックルベリーにさよならを』に登場したカオルさんと同一人物でした。(その時の感想記事はこちら。この時同時に上演されたのが『水平線の歩き方』でした。)設定ではあれから2年後、という事になっています。
カオルの父・白石はカオルの会社を訪れ真也と出会いました。"チョイ悪"な風貌と口調の白石ですが、夢を追い続け努力を惜しまない実直な人物だというのがわかります。家族を捨てアメリカへ旅立った彼が何故急に帰って来たのか。出されたお茶を2度もひっくり返し零してしまった事、極度の近眼に加えて老眼だと言うにも関わらず、帰国前に割れたメガネをそのままにしていた事、歩いている時の目つきや身振りから、「もしかして近眼どころの話じゃないのでは?」と思っていたら正にその通りで、彼は目の病気で視力を失いかけていたのです。そこで、何故急に帰国しカオルや元妻の輝子に会いに来たのかを想像すると切なくてたまりません。
たとえ視力を失っても、映画に携わる仲間を支える仕事に就くべく努力を続ける姿、愛する2人の顔を最後に目に焼き付けておきたいという想い、それでいて堂々とした立ち振る舞いや、カオルに会いたいと真也を振り回す憎めないワガママさに惹きつけられました。
そして、真也の持つ能力を知り半信半疑ながらも、「父が何故急に帰って来たのかその力で探って欲しい」と頼むカオル。白石の持ち物から真也が見たものは、映画の現場とはまるで関係ない光景でした。「映画の仕事をしているというのは嘘なのではないか?」と詰め寄った真也に対し、「お前は神様にでもなったつもりか?」「お前が見たものが真実だなんてどうして言い切れるんだ」と白石は返します。真也同様にはっとさせられる言葉でした。
特殊能力の有無に関わらず、人は自分の見たものが正しいと思い込んでしまいがちです。それはごく一部かもしれない、他の見方があるかもしれない、そう考えるきっかけを得る事ってなかなか難しい事だと思います。こういう事を臆せずに心を開いて言い合える関係が作れたら素敵な事だと思いました。これをきっかけに真也と白石の互いの気持ちが「好きな人の父親・娘の恋人」でなく、「対等に語り合える男」に変わったように思います。
そしてどうにかカオルと白石を会わせようと奔走する真也の優しさにジーンとしました。カオルに頼まれたから、とか好きな人の父親だから、といった打算めいた想いは一切無く、自分の身体を省みずに力を使い走る真也の一途な姿が魅力的です。
ようやく叶ったカオルと白石の再会。淋しかった気持ちや再会を喜ぶ想いを隠し意地を張るカオルと「目の事は絶対に話すな」と言う白石に何だか似たもの親子だなぁと感じます。そんなカオルが最後にようやく見せた笑顔にジーンとなりました。
帰国してから関わった人達皆に(真也と真也の家族、カオルと輝子、真也の会社の人達までも!)見送られ成田を発った白石は、この後視力を失ってもきっと希望を持って生きていけるだろうなと思えました。
ラストシーンで真也とカオルの繋いだ手にスポットが当たっていたのも印象的でした。2人の今後も見てみたいです。
主人公は真也ですが、白石がおいしい所を持ってちゃったようにも感じたので、是非他の作品でも真也の奔走ぶりを見たいです。

『水平線の歩き方』
キャラメルボックスにハマったきっかけになった作品で、今まで観た中で一番好きな作品です。
ダンスシーンの曲を聴いただけで涙が出てきます。
初演の時よりも、幸一の周囲の人達が彼を思う気持ちを強く感じました。だからこそ余計に、独りで生きていこうとする幸一の姿が切なくて悲しくてたまりません。12歳で母を亡くして父には捨てられて、独りで突っ走り「誰にも迷惑をかけたくない。」、「どんなに好きなっても、いつかなくしてしまうかもしれないと思うと怖くて心から誰にも頼れない。」と想いを吐露する姿、そして幸一が今の自分の状況を思い出した時に「もう思い残す事は無い」と言った瞬間とそれに対してアサミが返した言葉に涙腺崩壊しました。
母を亡くして以来、家族にも友人にも恋人にも溶かせなかった頑なな幸一の心を溶かしたのは、やっぱり厳しくも優しい母の愛なんですね。
ドアを開けて出て行く直前のアサミの言葉と表情、そして一人になった幸一が母の作って行ったおじやを食べて見せた笑顔、たまらなく素敵で涙が止まりませんでした。
泣き所だけじゃなく笑い所も満載で、お腹痛くなるほど笑ったシーンもたくさんあり、最高に楽しませてもらいました。

2つの作品に共通する「人は一人じゃ幸せになれない」という言葉と、今回の公演の「人が生きていくのに必要なのは、食べ物と友達。そして、思い出なんじゃないかな。」というキャッチコピーが心に響きます。
思い出は過去を振り返り懐かしむだけのものじゃなくて、今を生きる力を与えてくれるものなんだと感じました。
笑いと大きな感動をもらえた素敵な舞台でした。

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